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ドイツ経済「欧州の病人」から「EUの優等生」へ復活の理由をざっくりまとめてみた

      2019/01/25

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EU(欧州連合)の中でも非常に重要な役割を担っている国といえば、ドイツ
現在、ドイツときけば、「堅実な経済発展を続けている」というような、優等生的なイメージが広く浸透していますよね。

あれ、でもドイツって、「いつからこんな感じなの?」

実は、ドイツはほんの15年程前まで、“欧州の病人”と呼ばれていました。
今からじゃ想像できないので、びっくりです。実際に信じられないと思う方も多いはず。

…ということで、まずは、簡単にドイツ経済の移り変わり、変化をまとめてみました。

ドイツ経済の「呼び名」の変化

2000年代の前半、ドイツは“Sick Man of Europe”(欧州の病人)と呼ばれていました。それくらい、経済の低迷が深刻とされていたんですね。

有名なイギリスの経済紙“Economist”(エコノミスト)の記事から、ドイツの呼び名がどう変わったのか、年代によって見出しを追って、見て行きます。

1999年― “The sick man of the euro”(欧州の病人)

この頃の統計を見てみますと、1998年の第四半期、EU諸国のGDP成長率+0.5%に対し、ドイツのGDP成長率-0.2%

…この記事には、いかにドイツの経済低迷がEU全体の問題であるかが書かれていました。そんな時代があったんですね…。

2019年現在、EU全体の問題として経済の低迷が問題視されることが多いのは、ギリシャ(数年前のギリシャ危機が記憶に新しいですが)や、イタリア、スペインなどですね。

さてさて、話を1999年に戻します。ここから数年後、ドイツ経済がどんな風に表現されていったか見ていくと…

2003年 ―”Sick man walking”(欧州の病人が歩く)

2004年 ― “in 2005 the sick man of Europe, as Germany is now regularly called”
(2005年、欧州の病人としての呼び名が、ドイツに定着している)

この辺りも、まだネガティブな感じですね。今からは、ちょっと想像がつきませんが…。
しかし…

2007年― “Sick man no more”(もう病人ではない)

2007年、風向きが変わってきました。この辺りから、ドイツ経済が巻き返してきたことが分かります。

2008年には世界的な金融恐慌が起こり、ドイツ経済も一旦ダメージを受けて落ち込んだものの、素早く立て直しました。
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そして…

2010年代― “Miracle(奇跡)” “Economic Superstar”(経済界のスーパースター)

大変な違いです。それも、たった10年と少しの機関でこれだけ変わったことに、「凄い!」と感じずにはいられません。

現在のドイツ経済の状況

2016/1月のロイターの記事から引用すると…

“ドイツ連邦統計庁が14日発表した2015年の国内総生産(GDP)は速報ベースで前年比1.7%増加し、4年ぶりの高い伸びとなった。”

さらに、特筆すべきはドイツの失業率
2004-2006年まで10%超えだった失業率がどんどん下がり、2016年6月の時点では4.2%と、半分以下の数値になっています。

そして、好調な貿易

“ドイツ連邦統計局が8日発表した7月の貿易黒字(季節要因・稼働日数調整済み)は228億ユーロ(約3兆0600億円)に膨らみ、6月改定値の221億ユーロから拡大した。7月の黒字額は1991年1月の統計開始以降で最高。”
(― 2015/9/8 Wall Street Journalより)

もちろん、専門家の方に言わせると、単純に、貿易黒字だから良いというわけではない!とか、色んなことは言えるんでしょうが…。

やはり先ほど書いたように、少なくとも『欧州の病人』という状態からはかなり短い期間で脱し、堅実な経済を維持しているように見えます。

EU中から心配されていた”病人”だったのに、どうしてここまで回復できたんだろう?

ドイツ経済回復の考えられる要因3つ

① ユーロの下落と好調な輸出
これは、2008年から12年にかけて、ユーロがどんどん下落したので、それが経済回復の要因の一つである、という指摘ですね。

でもちょっと待って。ユーロの下落がなぜ、経済回復に関係するのでしょう?

最初から順を追って考えていくと…

ユーロが下落した=ユーロの人気が落ちて沢山売られてしまったために、値段が下がったということですよね。

ではなぜ、ユーロの人気が落ちて、沢山売られてしまったのか?
この背景としては、「悪いニュース」が沢山飛び込んできたからというのが、一つあるようです。

主に、2008年のリーマンショックから、2009年10月のギリシャショック(=財政赤字が実際よりもかなり膨らんでいたことが発覚して、経済が混乱!)から、欧州債務危機、などなど…。

リーマンショックは欧州に限ったことではありませんでしたが…。EUに関連する悪いニュースが多かった。そこで、みんな慌ててユーロを売ったので、ユーロはどんどん下落。
2011年には1ユーロ100円を割り込み2012年には11年ぶりに、1ユーロ95円台まで下落しました。(12年以降は反発)

ユーロの価値が下がったことで、相対的に円やドルの価値が上がる

ユーロ安の時に、例えば、ドイツは日本へ、ペンを輸出するとします。日本では何が起こるでしょうか?というと…

1ユーロ=100円の時は、100円で買う必要があったドイツ製のペンが、1ユーロ=95円になれば、95円で同じドイツ製ペンを買えるようになる!

…ということで、日本で安く買えるようになるので、「値段が安くなる」という強み=国際競争力 が高まり、ドイツの輸出が有利になります。ユーロ安は輸出面で、大きなプラスなんですね~。

(いや、当たり前じゃん。とつっこまれそうですが。)

ユーロが安くなったお陰で、海外ではドイツ製品が安く買えますから、その分海外での売り上げ=輸出が伸びて、ドイツの景気の回復に一役買った!ということですね。EU地域以外への輸出も拡大しています。

勿論その後、ユーロが上昇してもドイツの輸出は好調であることから、ドイツの経済が回復したのはこれだけが原因ではないということも言えそうです。

ただ、一つ付け足しておきますと、「ユーロ」はドイツだけで使われているわけではありません。スペインやイタリアといった赤字の国々でも使われていて、赤字の国々の経済状況もユーロは反映されているため、ドイツ経済が好調であっても、ユーロ安がすすむ場合があるんですね。

だから、「ドイツにとっては、いくらユーロが上がったといっても、やっぱり割安では?」=「ドイツはユーロの恩恵を受けている」という意見も多いようです。

ふぅむ。色んな要素が絡み合っているんですね…。

だから、一概にどうと言えなくて、経済は難しいけど…だから面白いとも言えそうです。

②労働市場の柔軟化と労働コストの低下

これは簡単に言うと、労働環境を整えて、労働コストを抑えることに成功したからだ、ということですよね。

労働コストは、いわゆる賃金コストとも言われます。「一定のモノを作るのに必要な賃金のこと」。
うーん…パッと聞くと分かりにくいですが…。
「賃金を下げたから労働コストが下がった」とか、そういう簡単な話ではないようです。

労働市場の柔軟化というのも、ちょっと分かりにくいですね…。
これも、とっても色んな要素のある話ではあるようです。

が、ごく簡単に、一つだけ例を挙げてみました。

例えば…

ドイツの制度で有名なのが「労働時間貯蓄制度」と呼ばれるもの。
これは、景気が良い時に残業した分を「貯蓄」して、後から不況になった時、その「貯蓄」分で休みを取ることができるという制度のことのようです。

これなら不況の時と好況の時で柔軟に労働してもらうことが出来ますし、「ちょっと今不況で厳しいし、仕事ないから、君、退職して」ということがなくなります。すると、退職金なんかのコストも減らす事が出来るってことですね。
この制度は多くのドイツ企業によって導入されています。

…というように、その他にも色んな労働制度改革が行われた結果、多くの先進国で年々上がっていく「労働コスト」を上昇させることなく、企業にとっても個人にとってもプラスである環境を生み出したというわけのようです。
失業率も回復し、仕事もあるから個人もお金も使うし、経済が回って行くという!

…もっとも、2013年のロイターの記事より引用してみると…

“欧州の中でドイツ経済は比較的好調。だが、労働市場改革とともに景気を支援してきた抑制された賃金は、2年あたり前から上昇し始めている。”

とあるように、少しずつ労働コストも上昇しつつあるようです。

しかし、悪いことばかりではありません。
2015年のロイターの記事には…

“ドイツの労働コストの高さは、ユーロ圏の他の諸国にとってはモノの生産で相対的に有利になり、景気押し上げにつながる可能性がある。”

ドイツの労働コストが上がるってことは、ドイツ以外の国にとっては相対的にその面で有利になるから、ユーロ諸国全体でみたら、景気上がるんじゃない?ということですね。

色んな要素が絡み合っている経済界。単純な正解がないから難しい。

③経済の「エンジン」、中小企業の強さ

これは、比較的分かりやすいです。
ドイツ経済を支えているのは、全土に広がる中小企業群だ!というものです。
ドイツは、都市集中型というよりは分散型で、優良な品質やスキルを持った中小企業が全土に点在し、それらが直接的に海外へ進出したりしながら、全体の経済を支えているようです。

確かに、”Made in Germany”と言われると、イメージ良いですもんね。(…”Made in Japan”のイメージも守っていきたいなあ。日本企業を応援したいです。)

大企業だけでなく、優良な中小企業が多いこともドイツ経済の強みになっているようです。

最後に

以上、ドイツ経済の強み、回復した要因について、かなりざっくりですが、挙げてみました。

他にも様々な要因があるし、本当にごく一部ですが…。本当に色んな要素が絡み合っていて、奥が深いなぁ…それが経済の面白い所かもしれません。

経済を復活させた国から学べる所、実際に成功させた国から学べる所も、沢山ありそうです。

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